この話の発端は、某住宅メーカーを退職した、現在会員の大石氏が次なる生き甲斐を求める事から始まりました。在職中、仕事で全国各地を訪れるうちに、伊万里、唐津、萩、備前など各地の焼き物と、地域性豊かな食材や調理法への関心が高まり、気に入った焼き物を買い揃え、また、自分の舌で覚えた味覚を記憶の中にストックしてきたので、それを活かした男の隠れ家的な居酒屋を経営したい、と考えました。
この夢を実現するため、大石氏は調理師学校に一年、知人の飲食店でも半年間修行を積みました。しかし、料理の腕前が本当にお客様に通用するのかわかりません。味は、それに段取りは…。それなら味にうるさい若い女性の試食会を開こうという事になり、知り合いの女性に声を掛けたところ「友人にフードプランナーの本所氏(後に会員になる)がいるので一緒でも良いですか。」との返事。フードプランナーが試食をしてくれるのなら願ってもないと早速お願いすることに。当日、本所氏から「どの料理も美味しかった。」と試食会は大成功。その後も何度か試食会を開催し、経験を積んだのです。いよいよ、お店のオープンへ向けてのカウントが始まりました。
まずは物件探し。知り合いの不動産屋に相談すると、最近、お洒落な店がどんどん増え、人気スポットとなりそうな予感の代々木上原が良いのではという話になり、ここに的を絞りました。物件が出るとすぐに見に行くと言う日々が何ヵ月か続くうちに、駅近の物件が出たと不動産屋から連絡が入ったのです。急いで見に行くと駅から1分と確かに近い。しかし、地下でビルの入口の雰囲気もいまいち。この条件では難しいと反対をしたのですが、大石氏が「年内にどうしても店をオープンしたい。」と、この場所での開業を決断したのです。
大石氏の夢の実現のため協力メンバーが集まりました。まずは、建築家佐藤氏に設計を相談。施工は知合いの山木氏にお願いする事に。また、そのころ別な仕事で知り合った照明デザイナーの光延氏に照明をお願いできないかと相談すると快く引き受けてくれました。大石氏のこだわりの厨房は厨房機器のプロの藤崎氏にお願いしようと佐藤氏が紹介してくれました。お店で使う食器は、大石氏が全国を訪ねていた会社員時代に岡山で知り合った備前焼陶芸家の石毛氏にお願いする事に。ネーミングはコピーライターの小倉氏が。ロゴ、サインデザインはデザイン会社のLCMがやる事になりました。こうして「磊」プロジェクトのメンバーが集まりプロジェクトがスタートしたのです。
大石氏の希望は「いかにもお店」というカンジにはしたくない、ホッとできるような、隠れ家的な雰囲気の店にして欲しい。また、会社に勤めていた時の同僚や友人をお客様に呼び、新鮮な魚料理と美味しい日本酒を出したい。さらに、調理台とネタケースを中心にお客様と対面するカウンター式にしたいとの希望でした。そこで佐藤氏は客層と料理内容から、古民家風の空間をイメージ。木の素材感を活し、照明の光りが素材に浸透するような落着いた佇まいをモダンに表現する事にしました。カウンターを中心に、入口付近にカウンターと一体になったテーブルコーナーをつくり、家庭で使うブラインドで空間を仕切り、隠れ家らしい落着いた雰囲気を演出。大石氏のお気入りの陶器や備前焼きの石毛氏の作品を飾る作品コーナーも壁に設置。照明デザイナーの光延氏には、作品コーナーは陶器が浮かび上がって見えるような照明に。カウンター席の照明は、料理が美味しく見えるのはもちろん、女性のお客様の顔も綺麗に見える照明という心憎い演出もされました。またテーブルコーナーには家庭で使うダイニング照明では有名な北欧のダウンライトをお店という場で採用し、家庭的であたたかな印象の照明で演出。
厨房機器の藤崎氏は佐藤氏の難しい設計の厨房ステージをさまざまな工夫や経験により、見事なオリジナルの厨房機器に仕上げていただきました。また、施工の山木氏は木場の三代目だけあり、木をふんだんに使った内装で床や梁材に無垢の木材を使用しながら、低コストに抑え洒落た落着きのある空間に仕上げてくれました。陶芸家の石毛氏も大石氏の要望に応え様々な種類の素敵な食器を用意していただきました。ネーミングはコピーライターの小倉氏が出した数多くの案から大石氏の名前にちなみ、石が三つで多い石(大石)にかけて「磊(らい)」という名前に決定しました。また、ロゴやサインデザインは限られたスペースしか表現できないことから視認性を重視しつつ、お店のイメージを考え制作しました。
こうしてメンバーの全員のバックアップにより、平成十六年十二月に「さかな亭 磊」がオープン。 この「磊」開店の構想が、後に原宿倶楽部設立の発端となりました。

- 佐藤 昌巳
店舗設計

- 光延 研二
照明デザイナー

- 山木 久始
工事施工管理

- 藤崎 三男
厨房機器販売
設計施工

- 石毛 勇
陶芸家(備前)・
龍石窯

- 株式会社 LCM
トータルデザイン
制作









